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2019.08.28コラム

クラウドファンディングを進化させた?アメリカのジョブズ法とは?

アメリカは、世界最大の金融市場であり、投資型クラウドファンディングにおいても、先進国をリードする地位を確立しています。
その立役者は、「ジョブズ法」という法律と言われています。
JOBS(Jumpstart Our Business Startups)ことジョブズ法は、2012年4月5日に、当時の大統領であるオバマ大統領が署名して成立しました。
日本語に訳せば、「起業促進支援法」といった意味になります。

ジョブズ法の目的とは?

お金

ジョブズ法の主たる目的は、インターネットの活用を通じ、小規模の成長企業が資金調達を容易に行えるよう規制緩和することで、起業や株式上場(IPO)しやすい環境を作り、雇用創出を生み、経済成長を高めることにあります。
具体的には、スタートアップが投資型クラウドファンディングによって事業資金を集めることが可能となったのです。

それまでの資金調達手段は、専らベンチャーキャピタル(VC)や個人のエンジェル(スタートアップ支援者)に依存していました。
ただし、資金調達に成功するためには、VCなどを感服させるプレゼンテーションに成功しなければなりません。
また、それまでの米国の法律によれば、未上場企業に投資できるのは、主たる住居以外に100万ドル以上の純資産を所有している人に限られていたのです。

ところが、ジョブズ法の施行後は、誰でも年間1万ドル(年収もしくは保有資産が10万ドル未満の場合は純所得の10%)まで、未上場企業への投資が可能となりました。
しかも、投資型クラウドファンディングならば、出資は小口単位になり、一般的な投資家にも門戸が開かれます。
つまり、スタートアップにとっては、クラウドファンディングのほうが事業資金を調達しやすいということです。

投資型クラウドファンディング普及のために日本でも法改正

法改正

クラウドファンディングはインターネット上において、オープンに情報を公開した形で出資を募ります。
今まで、ブラックボックス(非公開)の中で行われてきたスタートアップへの投資の透明性が、高まるわけです。
同時に、出資自体もオンライン上の手続きだけで完結し、より円滑な投資(スタートアップにとっては資金調達)が可能となります。

日本でも、金融庁に設置されている金融審議会からの報告を踏まえて、新規・成長企業へのリスクマネー供給促進を目的に、同庁は2014年5月に金融商品取引法などの改正を実施しました。
その大きな目的は、投資型クラウドファンディングの浸透を図ることにあります。
実際、そのころから日本でもクラウドファンディングの普及が加速しています。

規制緩和による市場のさらなる活性化に期待

クラウド

クラウドファンディングを活用しやすい環境が整ってきたわけですが、まだまだ改善の余地はあるようです。

例えば、国内では株式投資型クラウドファンディング に対する「総額1億円、投資家1人当たり50万円を上限とする」という規制の見直しなどを求める声が強まっています。
今後も何らかの規制緩和が実施される可能性もあるため、そういった動向を注意深く見守りたいところです。

その背景には、2001年以降、株式上場(IPO)件数が激減したことが挙げられます。
複雑化している証券規制、そして、エンロン破綻などの反省から導入された内部統制監査(通称SOX)導入による企業に強いられたコスト負担などが、その問題点として指摘されています。
そこで、この米国のJOBS法には、ベンチャー企業の資金調達を簡便化する方策として、下記2つがあります。

①株式上場(IPO)に関する規制緩和

IPO手続き費用・情報開示負担への対応直近の売上高が10億ドル未満の会社は、株式上場(IPO)の手続費用負担の軽減と、その後の情報開示の規制緩和、内部統制監査(SOX)が5年間適用除外。

②クラウドファンディングに関する規制緩和

投下資本に対するリターンを目的としない「寄付型」「購入型」のクラウドファンディングは、従来より、規制の対象にはなっておらず、規制されていたのは、投下資本に対するリターンが分配される「投資型」についてでした。
クラウドファンディングに関する規制緩和は、具体的には、(1)発行企業側と(2)投資家と発行企業の仲介会社に関する規制緩和となっています。
このような「投資型」のクラウドファンディングに対する規制緩和によって、資金調達の道が広がり、資金調達の円滑が期待されていますが、その一方で、個人投資家に対する詐欺的行為が横行するという懸念の声も聞こえてきます。

米国において成立したクラウドファンディング法は、米国と日本の投資環境が異なることから、そのままの導入は難しいとしても、日本のリスクマネー供給の議論を進めるにあたって、共通の課題を抱えていることから、非常に参考になると考えられます。